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◆ 学校をつくろう ◆
〜ラーンネットグローバルスクール首都圏校ができるまで〜 Vol.03
                      (2001/11/18発行)
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ラーンネットグローバルスクール首都圏校設立プロジェクト 久保です。

11月14日に「大前研一の政策学校 一新塾」でラーンネットグロー
バルスクール代表の炭谷さんの講義があり、私もその会に参加させて
いただいて首都圏校のPRをさせていただきました。

さすがに、『理想を語り、政策を論じ、自らが行動し社会創造の作業に
関わっていく「主体的市民」を多数輩出することを目指す』一新塾です
から、教育に関しても主体的に何を行動するのかというレベルで皆さん
が考えていることが、とても印象に残りました。

塾生の中には、現職の議員の方もいて、「ぜひ我々の市にラーンネット
首都圏校を!」と熱いエールを送っていただく一幕までありました。

また実際に自分のお子さんの入学を希望されている方もいて、それだけ
ですっかり嬉しい気持ちになってしまいました。

    *  *  *

さて第3号は、「英語の位置づけ」を、お届けします。

ラーンネット首都圏校では、EC(English Communication)のクラス
を月曜から金曜の毎日、1時限設けています。神戸校のカリキュラムと
の一番の違いでもありますので、今後もいろいろとご紹介する機会を
持ちたいと考えています。

今回は首都圏校の言語教育に関する考え方について、少し固い文章
でご説明しようと思います。

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│ 3時間目 「英語の位置づけ」
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言語の習得に関して大切なことは、まず母国語(第一言語)をしっかり
習得することです。

それが何語であろうが、8歳まで(諸説はありますが、この年齢が分か
れ目になる場合が多いようです)は生活の大部分を一種類の言語で
送ることが非常に重要なことです。よく帰国子女等がコミュニケーション
障害を起こすことが報告されますが、この時期までの第一言語の習得
が中途半端なケースが大きな要因になっています。

例えば、インターナショナルスクール等に通う日本人の小学生などは、
自宅での言語環境が同様に英語であれば問題はないのですが、学校
だけは英語で、自宅に帰ると日本語という半々の環境を8歳までの時期
に持った場合に、それなりに英語も日本語もできるようになるのですが、
思考の基軸になる言語ができないという弊害が報告される場合があり
ます。

実際に、翻訳業に携わる人たちの中においても、いわゆる「深い話」に
なったとたんに、どの言語を使っても十分なコミュニケーションが取れな
くなる人がいることがよく話題になりますが、その人の経歴を遡ると、
8歳までの言語環境に上記のような状況があった場合が多いそうです。

ラーンネットは日本語を生活の中心言語とするご家庭の子どもが主な
生徒になりますので、コミュニケーションという部分においては、まず
日本語を最重要視していることを、まず述べておきます。

そんなことを言いながら、なぜラーンネット首都圏校では毎日1時限の
英語(EC)の時間を設けているのでしょうか? 上記の説明を見て、
逆に心配をされる保護者の方がいらっしゃるかもしれませんね。

ご心配いただく必要はありません。生活の約8割以上が一つの言語
で行われていれば、第一言語作りの弊害になることはありません。

それは裏を返すと、毎日1時間程度やったからといって英語がペラ
ペラになるような魔法の方法は存在しないということでもありますが。

    *  *  *

それでは8歳までに英語教育をすることは悪いことなのでしょうか?
今度は、その時期に英語を学ぶメリットについてもご説明します。

二つほど例を挙げて考えてみましょう。

1.耳と英語

耳の機能を考えると、人間は成長する過程で母国語を聞いて育ち、
聴覚も母国語を聞き取るのに都合の良い耳に育ちます。これは人間
の成長過程において、一つ一つの音に対して意味づけをし、頭の中
に音の辞書のようなものを作り上げ、そして必要な音は認識し必要で
はない音は無意識のうちに無視できる能力を身につけるからです。

この「母国語のフィルター」は日常生活においては非常に効率的な
機能ですが、言い換えると、フィルターの構築に伴って、次第に音を
漠然と捉え始めることを意味しています。つまり、人が会話をするとき
には、お互いの言葉をそれまでの経験を踏まえて語調、センテンス、
成り行きなどを大まかに予測しながら行っているということなのです。
実際、相手の言葉を聞いているといっても聴覚的(言語的)認識は
40%にも満たないと言われています。(残り60%超は予測による
認識と言うことになります)

日本語の音は「子音+母音」か「母音だけ」で作られています。しかし
英語には「子音+母音」、「母音だけ」に加え「子音だけ」という音が
あります。日本人は言語を五十音に則った「日本語のリズム」によって
認識する習慣がついていますから、子音の連続する「英語のリズム」
を聞き取ることは非常に難しいのです。

さらに日本人と欧米人では認知周波数帯域の違いがあります。日本
人は最も周波数の低い母音(500〜1000ヘルツ)の情報を多く捉
える習慣があるのに対し、欧米人の使う英語には非常に周波数の高い
子音(2000〜3000ヘルツを中心に時に10000ヘルツにまで
達する高周波数域)が多く含まれています。つまり、日本人が英語を
聞く場合、通常の会話では使われない音を聞き取るわけですから、
たいへんなことは皆さんにも想像がつくと思います。

「母国語のフィルター」は個人差もありますが、10才頃にはほぼでき
あがってしまいます。ですからこの時期までに、母国語以外(例えば
英語など)の音やリズムを認識する習慣を持つことは、英語を聞く能力
を高めることはもちろんのこと、生まれながらに持っている耳の能力を
活かしていくことなのです。

耳の機能ということで言うと、音楽あるいは絶対音感の話題がよく
言われます。以前は先天的な才能だと思われていた絶対音感も今
ではトレーニングによって習得できることが実証されています。

一音会ミュージックスクールの江口寿子先生によると、絶対音感を
付けるには遅くとも6歳半までにトレーニングを始めなくてはいけない。
8歳以降になると、基本的には付かないというのが経験則だそうです。

絶対音感の場合は母国語のフィルターのような予測による認識は
ありませんので、純粋に聴覚的認識の機能の成長時期を捉えている
と言えるでしょう。

もちろん耳への刺激=脳への刺激ですから、耳だけではなく副次的
なさまざまな効果を生み出すとも言われています。このように幼少期
の英語教育は、決してお受験のための英才教育ではなく、人間が
生まれながら持っている能力の維持とその活用において非常に重要
であるといえます。

参考資料:流音聴力理論(傳田聴覚システム研究所)
参考資料:新・絶対音感プログラム(江口寿子・江口彩子共著)

    *  *  *

2.何歳くらいから英語を学び始めるのがよいか

子どもの母語がしっかり習得されないうちに外国語教育を始めると
母語習得に悪影響を及ぼすのではないか、という危惧を抱いている
人がいるようですが、最近の研究ではその心配はなく、かえって
母語習得にプラスになるという報告(カナダMcGill大学)もあります。

カナダの脳生理学者は、4歳から8歳までが最も模倣力が旺盛で、
この時期に外国語教育を始めるのが適切であろう、と述べています
(ペンフィールド著、上村忠男・前田利男訳「言語と大脳」誠信書房)。
人間の脳の発達からいって、言語を習得する時期が「生物学的時刻表
(biological timetable)」で決まっているのである、としています。
こういった説を発展させたのが、米国の生物言語学者レオバーグで、
脳が柔軟な時期は思春期までであり、それを過ぎると外国語習得は
困難になる、としています。

参考資料:児童英語指導法ハンドブック

    *  *  *

上記の二つの事例を見て、最初に申し上げた弊害が出る時期との
一致に一瞬戸惑われることかと思いますが、決して矛盾していない
ことはお分かりいただけると思います。

要はそれぞれの時期に相応しい言語教育のアプローチをすることが
重要であることを申し上げたいのです。

    *  *  *

具体的なカリキュラムの内容については、またの機会にお知らせ
しようと思います。

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│ ホームルーム 「保護者ヒアリング」
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11月11日にラーンネット首都圏校への入学を検討されている保護者
の皆さんとのミーティングがありました。

ミーティングの目的は、保護者の皆さんの率直なご意見を聴こう!と
いうことでした。告知期間の短さやミーティング日を一日しか設定しな
かったにも関わらず多くの皆さんにご参加いただき、いろいろなご意見
を伺うことができました。本当にありがとうございました。

その中でも一番の関心事は、やはり学校の場所(地域)でした。

学校づくりにおいて、ナビゲータ(先生)やカリキュラム(学習内容)
が重要なことは言うまでもありませんが、入学を検討されている皆さん
にとって、学校の場所(地域)はそれにも増して大きな問題ですよね。
遅くとも12月の中旬までには皆さまにご報告したいと思っています。

現状でもいくつかの候補地があるのですが、少しでも良い学びの環境
を実現するために、時間ぎりぎりまで交渉及び調査を進めていきます。

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│ ひとりごと 「生命保険の仕組み」
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先日、企業経営者が集まるプライベートな勉強会に参加しました。

その日は、「生命保険の仕組み」というテーマでした。
私自身が保険に全く興味がない、というよりも保険のあり方に疑問を
もって生きてきた人間なので、あまり気乗りはしなかったのですが、
お世話になっている社長さんに誘われたので、とりあえず参加した
というのが本音でした。

予想に反して、勉強会は確率の計算から始まりました。

「10本のうち1本が当たりのくじが10セットあります。10人
が同時にそのくじを引いて、1人も当たらない確率、少なくとも
1人当たる確率、少なくとも2人当たる確率・・・、をそれぞれ
求めなさい。」

ふむふむ、1人も当たらない確率は(9/10)の10乗だな。1人
だけが当たる確率は(1/10)の1乗×(9/10)の9乗×
10C1だから、少なくとも1人当たる確率はそれらを足して・・・
と子どもの頃から確率好きだった僕は喜んで考えていました。

もちろん、そんなことはエクセルがBINOMDIST関数を使って、ささーっ
と計算してくれるので、本題ではありません。

その次に「1/100の当たりの確率のくじを100回試行した場合」
「1/10000を10000回試行した場合」進んでいくと、保険
金額と保険料の関係を推測することができて、契約者数が多い保険会
社が有利なことが一目瞭然になる、という仕組みだったわけです。

学びの材料というのは本当にいろいろなところに転がっていますね。
子どもにとっても、大人にとっても。
(久保)

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企画編集:久保 一之
    ラーンネットグローバルスクール首都圏校設立プロジェクト

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